油中ガス分析でトップレベルの異常診断技術

油中ガス分析は、過熱や放電などの変圧器内部で起こる異常を油中溶解ガス(油中ガス)の分析によって診断いたします。変圧器内で過熱や放電などが起こると、周囲の油や固体絶縁物が分解し、分解ガスが油に溶解します。したがって絶縁油を採取して、溶解ガスを分析すれば、内部の異常を推定できます。油中ガス分析では、主に変圧器の内部異常の有無やその種類、様相などを診断することが可能です。ユカインダストリーズは、油中ガス分析のパイオニアとして正確で信頼性が高い診断結果をご提供いたします。

変圧器内部の不具合事象

コイルの溶断

接触部の過熱・変色

リード接続部 絶縁紙の黒化

変圧器の内部異常を早期に発見!

変圧器をはじめとする油入電気機器内で過熱や放電といった内部異常が発生すると絶縁油や固体絶縁物が分解してガスが発生して、油に溶解します。この絶縁油中のガスを分析し、各成分濃度や比率を解析することで異常の有無、異常の様相とその度合いを診断する方法が油中ガス分析による異常診断です。
油中ガス分析による異常診断は、高感度に内部の異常を検出でき、稼働中の変圧器にも適用可能であることが特徴で、国内外問わず、広く変圧器の保守管理に活用されています。

下の動画は、油中での過熱および放電実験の様子をとらえたものです。加熱実験の動画では、油が激しく沸騰しながらガスが発生しています。放電時の動画では、アーク放電の発光があった直後、電極の間から放電で発生したガスの気泡が出てくる様子がとらえられています。これは実験の動画ですが、変圧器内で過熱や放電が発生した場合も、同様に油が激しく分解してガスが発生していることが想像できます。

下図に鉱油に対する局所加熱と放電実験の結果(当社実験における発生ガスデータのガスパターン)を示します。図から加熱実験では、温度によって発生するガスの種類が異なっており、温度が高くなるとエチレン(C₂H₄)が多くなることが分かります。また放電では、アセチレン(C₂H₂)が発生することが分かります。ガス発生傾向の違いは、化学反応の違いであり、反応時のエネルギーやその他の条件によって差が生じます。こういった現象によるガス発生の違いを利用して変圧器内部の異常の有無や様相を推測することができます。

加熱および放電実験で発生するガスパターン

※当社実験データ(最も多いガス成分濃度を1とした場合の各成分の比率)

加熱 300℃

加熱 500℃

加熱 700℃

部分放電(PD)

アーク放電

 

油中ガス分析では、絶縁油に溶解している窒素(N₂)、酸素(O₂)、水素(H₂)、メタン(CH₄)、エタン(C₂H₆)、エチレン(C₂H₄)、アセチレン(C₂H₂)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO₂)などを分析し、その濃度や各成分の比率を用いて診断を行います。当社の分析では、油中ガス抽出装置と分析システムを自社開発することで高い抽出率を実現し、高感度かつ高精度な油中ガス分析が可能です。放電および高温過熱の検出に特に重要なアセチレンを高感度かつ高精度で分析できますので、内部の異常を早期に発見し、報告することができます。

当社油中ガス分析装置

油中ガス分析の判定基準

油中ガス分析の判定基準(電気協同研究 第65巻 第1号)

判定レベル 判定基準(単位:ppm) 分析周期(推奨)
要注意Ⅰ 水素
H₂
メタン
CH₄
エタン
C₂H₆
エチレン
C₂H₄
アセチレン
C₂H₂
一酸化炭素
CO
可燃性ガス総量
TCG
1回/6ヶ月
400 100 150 10 0.1※ 300 500
要注意Ⅱ ➀C₂H₂≧0.5
➁C₂H₄≧10 かつ TCG≧500
1回/3ヶ月
異 常 ➀C₂H₂≧5
➁C₂H₄≧100 かつ TCG≧700
➂C₂H₄≧100 かつ TCG増加量≧70ppm/月
1回/1ヶ月

※当社では初期異常の早期発見の観点から、C₂H₂については0.10〜0.49ppmを要注意Ⅰレベルとしています。

様相診断

異常診断図による診断は、各ガス成分の組成比(アセチレン/エタン、エチレン/エタン)に基づいた診断図などを用い異常の様相を評価します。

異常診断図B(電気協同研究 第65巻 第1号より)

異常診断図Bは電力用変圧器の不具合事例を現象別に区分したもので、右へ行くほど熱的に、上へ行くほどエネルギー的に高くなります。診断の正答率は90%以上あり、現状の診断方法として最も使われています。

油中ガス分析の分析実績

(2021年3月現在)

年間:約10,300試料
累計:約42.9万件

油中ガス分析関連社外発表紹介

油中ガス分析関連研究発表等をこちらで紹介しております。
油中ガス分析関連社外発表等一覧ページへ

その他の社外発表については、こちらをご覧ください。
社外発表等一覧ページへ

セット分析のご案内

油入電気設備保守・保全に必要な絶縁油分析項目をお客様にわかりやすくしたセットにてご依頼を受け賜わっております。

異常診断セット

・油入変圧器の運転状態に異常が無いかを確認したい方。
・変圧器の新規設置または入替等で、初期異常がないことを確認したい方。
・どんな分析項目を選んだらよいか悩んでいらっしゃる方。

【内容】
<変圧器の異常診断の結果を判定・診断し、ご報告いたします>
油中ガス分析、水分量、一般特性試験3項目を測定します。
油中ガス分析で変圧器内の放電や過熱などの異常を確認できます。
一般特性試験の結果から絶縁油の劣化の有無を調べます。

【測定項目】
油中ガス分析
水分量
■ 一般特性試験3項目(絶縁破壊電圧 体積抵抗 酸価

経年劣化度診断セット

・油入変圧器の余寿命が知りたい方。
・多くの変圧器を所有され、更新時期を検討・確認されたい方。
・中古変圧器の購入または、売却を検討されている方。
・変圧器を初めて点検される方。

【内容】
<経年劣化度診断と異常診断の結果を判定・診断し、ご報告いたします>
油中フルフラール分析(又はアセトン分析)、油中ガス分析、水分量、一般特性試験6項目を測定します。
変圧器内の絶縁紙劣化度を絶縁紙劣化生成物(フルフラールまたはアセトン)測定から推定し、余寿命を予測します。
油中ガス分析で変圧器内の放電や過熱などの異常を確認できます。
一般特性試験の結果から絶縁油の劣化の有無を調べます。

【測定項目】
経年劣化度診断(フルフラールまたはアセトン分析)
油中ガス分析
水分量
■ 一般特性試験6項目(絶縁破壊電圧 体積抵抗率 酸価 密度 動粘度 引火点)

お問い合わせ

ユカインダストリーズへのお問い合わせ・資料請求のご依頼は、お電話もしくはメールフォームより承っております。 お気軽にお問い合わせください。

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