学会発表

第42回絶縁油分科会研究発表会報告

2022年6月10日に京都リサーチパークで開催されました第42回 絶縁油分科会研究発表会におきまして2件の技術発表を行いました。
『耐熱紙使用変圧器の劣化診断に関する探索』
『耐熱紙の基礎物性に関する研究Ⅰ: 熱劣化による吸湿特性と引張特性の変化』
本発表は富士電機㈱殿との共同研究成果の一部であり、劣化耐熱紙の基礎物性と耐熱紙使用変圧器の劣化診断手法確立に向けた劣化指標成分の探索について報告いたしました。

〈発表要旨〉
耐熱紙には耐熱性向上を目的にアミン系化合物が添加されている。アミン系化合物はセルロース分子間を架橋することで絶縁紙に耐熱性を付与すると考えられている。アミン系化合物によって架橋される部位は水分吸着点でもあるため、耐熱紙の吸湿特性は普通紙と異なると考えられる。またセルロース分子間の架橋により、紙の引張特性(引張強度・破断ひずみ)にも影響を与えると考えられる。さらに耐熱紙は紙の劣化指標成分であるフルフラールがアミン系化合物と反応し油中から消失するため、耐熱紙の劣化指標とならないことが知られている。
本発表では第一に耐熱紙の熱劣化時の吸湿特性および引張特性の変化を明らかにし、耐熱紙の劣化診断をする上で普通紙との特性の差異を考慮する事の要否、また耐熱紙劣化基準の妥当性を検証する基礎的データを取得した。第二に耐熱紙の劣化指標としてフラン5種に着目し、劣化指標としての有効性を加速劣化試験により検証した結果を報告した。

図1. フラン総量とDP残率の関係

図2. 新品絶縁紙の吸湿特性